研究概要 |
本研究では,タンパク質を分離対象物質のモデルとし,温度によりポリマー鎖の構造が可逆的に変化する性質(いわゆる感温性)を有するモノマーと,タンパク質を吸着するための相互作用を担うモノマーからなるコポリマーを利用した感温性高分子吸着剤を創製し,温度スイング操作によるタンパク質の高度分離・回収と吸着剤自体の再生を可能とするようなプロセスの構築を目的としている.モデルタンパク質としては,変性温度が62-65℃であり,等電点をpH4.8付近に有する牛血清アルブミン(BSA)を用いることとした.そこで,BSAの変性温度よりも低い33℃付近に相転移温度を有するN-isopropylacrylamide (NIPA)と,正電荷を有するvinylbenzyl trimethylammonium chloride (VBTA)からなるコポリマーゲル,およびコポリマーをシリカ粒子表面に修飾したコポリマー修飾シリカを作製した. 本年度は,前年度に確立した手法によって作製した感温性高分子吸着剤(コポリマーゲルおよびコポリマー修飾シリカ)を用いたBSAの温度スイング吸脱着実験を実施し,いずれの吸着剤でも25℃でBSAを吸着し,40℃に昇温することで吸着したBSAの一部を脱着することに成功した.さらに,温度スイング操作を繰り返すことでこのようなBSAの吸脱着を繰り返し行えることを確認した.また,コポリマーゲルの場合は架橋密度が高くなりすぎると,BSAの脱着は起こらなくなることが明らかとなった.
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