研究概要 |
◆装置開発と設備導入 温度調節された高温ブロックと低温ブロックの間に、試料溶液を入れたキャピラリーをスライドガラスで挟んだモジュールを挿入し、高温ブロックから低温ブロックに向かって、スライドガラスを精密に移動させることができる装置を作成した。凍結が進行している領域を測定するために、装置内部を窒素で充満したアクリル容器内に入れ、デジタルマイクロスコープを使用し、各点の温度の時間変化と、凍結領域を比較して、結晶化が進行している領域の温度を調べた。溶液が凍結すると、比熱が変化するため、温度分布のみから凍結領域を推定することもできると考えている。 熱力学的に準平衡状態にある高分子溶液の、溶媒の結晶化温度を測定するために、クライオDSC用の冷凍機を導入する。この設備は、-55℃までの温度範囲で、溶液の結晶化温度、高分子の析出による潜熱及び比熱を、正確に測定した。また、過冷却度を測定するためにレーザー雲り点装置を導入し、過冷却度と相分離の関係を調べた。 ◆ポリ乳酸の分子量、種々の溶媒の融点、冷却速度がセルフ/デンドライト転移に与える影響 ポリ乳酸/1, 4-dioxane系において、高分子溶液の濃度を変えて、一方向凍結実験を行った。溶液の温度と凍結速度を変えて、溶液内の温度変化を測定し、過冷却度と転移の関係を解明した。 ◆バイモーダル構造の作成 小さいセル径と大きなセル径が混在したポリマーハニカム多孔体ができれば、分離膜や再生医療用の足場として有用である。そこで、ポリ乳酸の結晶周辺で気泡を生成させた研究を応用する。予め溶液内に少量のガスを溶解させた。溶媒が結晶化すると、結晶の中にはガス分子は存在できないため、固液界面を通じて、高分子溶液に排出された。ある臨界濃度に達すると、泡として生成すると考えられる。これを利用して、溶媒結晶を鋳型としたセルと気泡のセルでバイモーダル構造を作成した。
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