研究概要 |
高分子溶液を一方向から凍結し、溶媒を結晶化(第1相、晶析)させることで、溶媒の結晶を鋳型(テンプレート)として高分子(第2相)を配列することができる。その後、凍結乾燥にて結晶を昇華させて、取り除くと、本研究が対象とするポリマーハニカム多孔体を作ることができる。申請者らはこのようなポリマーハニカム多孔体をポリ乳酸(PLLA)と1,4-dioxane溶液で作成することに成功した。電子顕微鏡による断面写真より、凍結方向に対して垂直な断面は、セルラ型の孔であり、平行な断面は、チャネル状にセルラ型の孔が配列していた。更に溶液濃度を高くして、一方向凍結すると、セル壁が魚のホネのように入り組んだ構造が現れた。これは、鋳型になった溶媒が、過冷却により、セルラ型からデンドライト型に転移したためであると推測し、デンドライト型ポリマーハニカム多孔体と称している。ポリマーハニカム多孔体は、再生医療用のスカホールド(足場)、無機材料の鋳型、分離膜、触媒担体、断熱材、人工筋肉、絶縁材、防音材、衝撃吸収材、など幅広い応用が期待されているが、系統的な研究は、なされていなかった。本研究の目的は、この一方向凍結法において、高分子種・溶媒種・凍結方向や凍結速度などのプロセス条件が、多孔構造体の形態やサイズに与える影響を、溶媒の結晶化温度の実測値をもとに整理し、多孔体形成過程のメカニズムを解明することである。 研究を実施するために高分子溶液中で結晶が成長する過程を観察可能な可視化装置を開発した。そして結晶の成長には、水蒸気などの不純物、冷却速度、溶液濃度が関与していることが明らかになった。これらの知見は高分子溶液の一方向凍結による多孔構造体の創製において重要な示唆を与えるものであり、本年度から採用された本年度の継続研究においても重要な役割を果たしている。
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