研究概要 |
構造化アルコキシドとしてビストリエトキシシリルエタン、(BTESE) (tEO)_3-Si-CH_2-CH_2-Si-(OEt)_3を選定し,ポリマー調製条件・焼成条件・気体透過特性の評価を行なった.BTESE系シリカ膜は,TEOSより作製した既往のシリカ膜よりも一桁高い水素透過率(~1×10^<-5>molm^<-2>s^<-1>Pa^<-1>)を示し,H_2/SF_6透過率比は1,000以上を示したがH_2/N_2透過率比は10程度であった.一方,シリカ膜(TEOS)はH_2/N_2透過率比が1,000程度で構造化シリカ膜よりも明らかに小さい細孔径分布を有していることが明らかになった. これらの細孔径分布の明確な違いは,アモルファスシリカネットワークを形成する最小ユニットがSi-C-C-Siになることで,TEOSを用いた場合よりもルースになったためと考えられる.200℃におけるHe, SF_6混合ガス分離試験結果より,He, SF_6透過率はそれぞれの純ガス測定時の透過率と一致し,混合による透過阻害の影響は確認されなかった.このことから,BTESE系シリカ膜における高水素選択性はアモルファスシリカネットワークによる分子ふるいによるものと考えられる また,TFOS系シリカ膜において高温水蒸気透過後、He/H_2透過率比および活性化エネルギーとも細孔の緻密化に伴い大きく増加するが,BTESE系シリカ膜では,He/H_2透過率比,H_2透過の活性化エネルギーともほとんど変化せず耐水蒸気性を有することが明らかになった.これは,シリカネットワークがSi-C-C-Si結合を有することで膜の疎水性が増加し,水蒸気雰囲気下におけるSi-OH基の生成を抑制したためと考えられる.
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