球状コロイド粒子からなる粒子膜が光学的異方性(屈折率の異方性)を示す事を明らかにした。従来、コロイド粒子膜は、コロイド結晶などに代表される、特異な光学特性を示す新しい材料として注目をされてきたが、粒子膜自体の屈折率に対する評価は為されてこなかった。我々は、粒子膜の形成パターンとその後の粒子膜の光学特性(屈折率)との相関を明らかにし、コロイド粒子膜の基礎物性を理解することを目的とした。 偏光板と、補償板である鋭敏色板を用いて、液滴乾燥法で作製したコロイド粒子膜を観察した。また、粒子膜の形成過程を顕微鏡で観察した。この結果、粒子膜は、球晶構造に対応する偏光特性を示した。電子顕微鏡による粒子膜表面の観察から、この球晶構造は、液滴周囲から乾燥が進行する、液滴乾燥法の乾燥パターンに由来する事が明らかにした。すなわち、液的乾燥法を用いると、コロイド粒子は放射状に配向して粒子膜を形成する。他の乾燥方法として1軸方向への異方的液乾燥を行ったところ、粒子膜は、球晶とは異なる複屈折を示した。従って、粒子膜作製時の乾燥方向が粒子膜の配向性を決定し、この配向性によって光学的な異方性を示すことが明らかとなった。 観察された粒子膜の複屈折特性は、粒子配列の配向性のみならず、構成粒子の物性(粒径、屈折率)や周辺媒体の屈折率にも大きく依存する。従って、粒子膜を構成する一次粒子の物性と周辺媒体の屈折率、さらには粒子配列の配向性の三つの因子をそれぞれ独立に制御することで、多様な複屈折材料を作製出来ると期待される。
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