球状のコロイド粒子は、粒子薄膜を形成すると複屈折性(光軸に応じて屈折率が異なる性質)を示す。個々の粒子が光学的に等方な球状粒子であるのに、粒子膜の構造体を形成すると光学的異方性を示す点で興味深い。これまでに、粒子膜の複屈折性発現に粒子液的からの乾燥方法が大きく影響することを明らかにしている。本年度は、粒子膜の屈折率差の定量化と、コロイド粒子の粒径や種類が複屈折に与える影響について研究を進めた。 粒子膜の屈折率差は、乾燥が進行する方向とそれに垂直な方向とで、10^<-3>程度の屈折率差が生じていることがわかった。これは、既存の複屈折材料である液晶分子に比べると一桁から二桁程度低い値であり、大きい複屈折性が必要とされる材料として用いるには現状のコロイド粒子薄膜は適切ではないことを示す結果である。個々の粒子が球形であることが小さい屈折率差の原因であると考えられる。また、コロイド粒子の粒径が及ぼす影響について調べると、直径300nm以下のシリカ粒子については複屈折性を発現し、その屈折率差と粒径は正の相関を示した。300nm以上では、粒子膜が白濁し、ほとんどの光が散乱されるため、複屈折性の確認はできなかった。 直径120nmのシリカ粒子と同140nmのポリスチレン粒子を混合して粒子膜を作製すると、それぞれの粒子単体で粒子膜を作製した場合に比べ大きい屈折率差を示すことがわかった。粒子を混合した場合、粒子膜の構造は不規則になる。従って、複屈折の発現には、粒子膜内部での規則構造が必ずしも必要ではないことが明らかとなった。これらの結果は、大きい屈折率差を有する粒子薄膜を作製する際にきわめて重要な知見である。
|