二酸化チタン等の光触媒に期待される諸機能は光励起によって生じる電子と正孔に由来するが、電子と正孔の多くは利用されること無く再結合することで活性を失う。これの解決策として、電子を蓄積し再結合を防止する「助触媒」となる白金等の貴金属のナノ粒子を光触媒の表面に固定化することが有効であることは広く知られている。本研究では、助触媒として固定化した金とパラジウムからなる合金ナノ粒子が、二酸化チタンの光触媒性能に及ぼす影響について調査を行った。 超音波を照射によって貴金属ナノ粒子を調製・固定化する「超音波還元法」によって得た (A) 金・コア(核)/パラジウム・シェル (殻) 型ナノ粒子を固定化した二酸化チタンに加え、 (B) 金およびパラジウム粒子の混合物を固定した試料を作製した。さらに (A) を熱処理することで、固定化したナノ粒子内に金およびパラジウム原子が均一に分布する試料 (C) も作製した。これら3つの試料を構成する元素の組成は本質的に同じであり、二酸化チタン表面に固定化した金とパラジウムの形態のみが異なる。光触媒活性を評価したところ、紫外光 (250-385nm) を照射した際は試料 (C) 、可視光線 (385-740nm) の時は (A) が高活性を示した。すなわち今年度の研究成果から、同組成でも助触媒の構造によって、言い換えれば「表面へのくっつけ方によって」光触媒活性が全く異なることがわかった。特に可視光線照射下でコア/シェル粒子固定化試料が高活性を示したことは、太陽光や室内照明で光触媒を活用する光触媒の「可視光線応答化」を検討する上でも意義深いと考える。 今後は、助触媒による二酸化チタンの電子構造の変化と光触媒活性との関連を検討するとともに、二酸化チタン以外の光触媒(例えば酸化タングステン)への助触媒効果についても把握し、2種類の金属からなるナノ粒子の助触媒として優位性を明らかにしたいと考える。
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