当初の目的にしたがい、遷移金属オキシナイトライドを用いた水分解を促進するために、合成方法の改良を行うことと組成変化による物性変化と光触媒活性への影響について体系的に調べた。遷移金属オキシナイトライドは、金属酸化物に比べ、粒子形状などの制御が困難であり、また、異元素を均一に組み込むことも容易ではなくごく限られた数の報告しかない。この問題を解決するために、化合物の合成過程でフラックスを添加し軟化させることで制御をし易くした。NaClやNa2CO3をフラックスに用い、高い結晶性の粒子を調製することができた。さらに得られた粒子は単分散の微粒子であった。これらは従来の方法で合成したものより高い光触媒活性を示した。さらにもう一つの検討事項として異元素で置換したオキシナイトライドの合成を行った。このときも上記フラックスを用いることで、導入した成分が均一に分散したものが得られた。これによる物性の変化と光触媒活性への影響を調べたところ明確な効果が見出された。化合物中のベースとなる金属の価数よりも低原子価の金属カチオンを導入することによって水素生成活性が向上することが見出された。低原子価カチオンを同型置換することにより、アニオンサイトに空孔を意図的に導入することができる。このアニオンサイト空孔が固体中のドナーを消費することでn型特性を抑え真性半導体的にすることで活性が向上することが分かった。応用としてはフラックス方で作製した結晶性の単分散微粒子を用いて薄膜電極としての展開も検討した。
|