セルロースは地球上で多量に生産されているが、多くが未利用なバイオマス資源である。セルロースの有効活用法の開発は、持続可能社会の構築に大きく貢献すると期待される。本研究課題では、セルロースの高効率糖化を固体触媒反応で達成することを目指している。本研究では、活性炭の表面官能基に着目した触媒調製法の確立と、セルロースの反応に対する反応条件の検討、および、セルロースの結晶性と反応性の関係を解明することを目的として研究を実施した。 触媒なしで水熱反応を行うと、目的生成物であるグルコースは180℃以上で過分解反応(脱水反応など)する。そのため本研究では、セルロース加水分解反応を180℃よりも低い120-180℃の水熱条件下で検討した。触媒としてスルホ基を有する固体に注目した。スルホ基は、水熱条件下のような高温条件で脱離しやすいが、前処理として200℃で水熱処理して熱分解しやすいスルホ基を除くことにより、グリコシド結合の加水分解に有効でかつスルホ基溶出のないスルホン化活性炭を得ることに成功した。それを触媒に用いたところ、150℃の触媒水熱反応により低結晶性セルロースからグルコースを選択的に高効率で得ることに成功した。また、スルホン化活性炭触媒が固体触媒としてセルロースの加水反応を促進していること、セルロースから高選択的にグルコースを生成できること、セルロースの構造が反応性に大きな影響を与えることを見いだした。さらに、スルホン化活性炭の調製方法により触媒特性が大きく異なることを明らかにした。また、様々な重合度のオリゴ糖の加水分解の研究より、スルホン化活性炭触媒では重合度が大きくなるほど反応速度が速くなることを見いだし、吸着過程が重要であると考察した。それらの結果を元に、スルホン化活性炭触媒の触媒設計を改良し、さらに優れた触媒開発に向けた具体的な指針を得た。
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