研究概要 |
酸化チタン粉末を10Mの水酸化ナトリウム水溶液と混ぜ、150℃で20時間水熱合成処理することによりチタニアナノチューブを得た。TEM像から150℃で水熱処理した試料は内径が5nm程度のチューブ構造であることがわかった。このチタニアナノチューブと既存の固体酸触媒を用いてトルエンと塩化ベンジルのアルキル化反応を反応温度300Kで行った結果、スルホン酸樹脂、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、含水ニオブ酸、二酸化チタンなどの既存の固体酸触媒では、ほとんど活性を示さなかったのに対し、チタニアナノチューブは著しく高い活性を示し、生成物収率は3時間で90%を超えた。このように、チタニアナノチューブは、室温付近でも作動する非常に高活性なルイス酸触媒であることが明らかとなった。また、チタニアナノチューブが層状チタン化合物であることから、類似した構造体であるMonoclinic相のものとOrthorhombic相の層状チタン化合物と、それらを層剥離、再凝集させたチタニアナノシート材料とチタニアナノチューブとの比較も検討したところ、いずれの試料も触媒活性は低いことがわかった。これらの結果から、ナノチューブ構造であることが高活性に寄与していることが示唆された。さらにFT-IRを用いて酸点の性質を調べたところ、チタニアナノチューブはブレンステッド酸とルイス酸を有しており、その酸量はピリジン吸着量からLewis酸約0.25mmol/g,ブレンステッド酸約0.10mmol/gであることが明らかとなった。
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