チタン酸ナノチューブの構造と酸触媒特性との相関関係を明らかにするために合成温度の制御を行った。合成温度が100℃未満の時、出発物質の結晶相であるアナターゼ構造が混在し、ルイス酸点のみ有した材料であることがわかった。100℃から150℃程度の合成温度ではナノチューブ構造が形成され、ルイス酸点およびブレンステッド酸点の両方を有し、最も高い触媒活性を有することが明らかとなった。一方、合成温度を180℃以上にすると、ロッド状の層状チタン化合物が形成され、表面積が著しく低下し、触媒活性も大幅に低下することが明らかとなった。以上のことから、ナノチューブ構造を有するときルイス酸点およびブレンステッド酸点が形成され、高い触媒活性を示すことがわかった。また、チタン酸ナノチューブと同様の結晶構造を有するチタン酸ナノシートと酸性質の比較を行ったところ、ルイス酸点とブレンステッド酸点の両方ともわずかにチタン酸ナノチューブの酸強度が高いことが明らかとなった。このことから、チタン酸ナノチューブは、ナノシートがスクロールした構造を有しており、格子に歪みが生じ酸点が強くなっていることが示唆された。さらに、チタン酸ナノチューブの酸強度を高めるために異種元素(Nb^<5+>)をドープしたチタン酸ナノチューブの合成を試みた。Nbの添加量を増加させるにつれ触媒活性が大幅に向上することがわかった。これは、ブレンステッド酸性質が大幅に向上することが原因であることが明らかとなった。
|