研究概要 |
詳細な細胞情報の獲得を目的として、単一細胞の解析技術が注目を集めている。しかしながら、微量な単一細胞成分を扱うことは今尚困難であり、その効率的なハンドリングを可能とするツールの開発が求められている。本研究では、単一細胞の分離、mRNAの回収、逆転写反応、PCRまでの遺伝子解析に必要とされるプロセスを効率的かつ簡便に行えるマイクロツールの開発を目的とする。本年度は、昨年度までに開発したマイクロツールを用いて、全血中の単一免疫細胞からのレセプター遺伝子や抗体遺伝子の発現解析、及びシークエンス解析を可能とする系の構築を行った。本ツールを用いた手法が単一細胞の遺伝子発現解析に利用できることを確認するために、単一T細胞を分取し、ハウスキーピング遺伝子(β-actin, GAPDH)のmRNA発現量の評価を行った。Real-time PCRを用いた測定の結果、それぞれのコピー数は約1600,2000copies/cellと算出され、本手法によって単一細胞からの遺伝子発現解析が行えることが示された。また、イメージングによって予め細胞サイズを計測し、mRNA発現量を評価したところ、その発現量は細胞サイズに依存することが示唆された。血清供給または血清飢餓条件にて培養を行ったT細胞の単一細胞レベルでのβ-actin mRNA発現量の変動を定量評価したところ、血清供給条件においてβ-actinの発現に誘導が確認された。さらに、T細胞レセプターや表面抗原遺伝子を逆転写PCRによって増幅し、シークエンス解析可能なことがわかり、本手法を用いた単一細胞の遺伝子解析法の有効性が示された。
|