研究概要 |
今年度は,ガスキャリア液を構成する酸素運搬体として,ピケットフェンス型コバルトポルフィリンmeso-tetrakis(α,α,α,α-o-pivalamidophenyl)porphyrinatocobalt; CoTpivPP)に着目した,この錯体は,血中の酸素運搬体であるヘモグロビンや酸素貯蔵庫であるミオグロビンに共通して存在するヘムの機能を模倣した物質で,酸素親和性かつ安定性に優れている.また,02結合部位側が疎水性環境にあるという特徴を持つ.これは,ヘモグロビンにおいて02結合部位側の疎水性環境が02-Fe錯体の安定化,可逆性に寄与しているという機能を模倣するためである.実際にこの錯体は,Hb同様に酸素と可逆的に反応することが確認されており,酸素運搬体として有用である.ガスキリア液に適用する溶媒として,安全性と酸素移動性能の観点から選定を進め,安全性については,使用温度域における蒸気圧がなるべく低いものを検討し,さらに可能な限り生体に無害なものを選定した.また,酸素移動性能に関しては,同じ錯体でも溶解させる溶媒により酸素の結合・解離速度が異なることが分かっているため,錯体との様々な組み合わせを検討した. 以上より,CoTpivPP-有機溶媒系のガスキャリア液を用いることで,安全かつ効率良い酸素濃縮システムが開発でき,酸素濃縮装置の小型化・低騒音化の実現の可能性を示せた.
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