研究概要 |
本課題では,申請者が特許申請した新方式VLBI(超長基線電波干渉計)軌道決定手法を用いて,既存の低高度地球周回衛星を3局によるクラスタ型小規模地上局で観測する。軌道決定精度を評価し,受信・データ解析に必要な装置,および処理アルゴリズムの効率化を検討する。決定精度の目標値は,1m未満に設定する。 本研究を発展することで,月・火星探査衛星の新方式軌道決定システムの実用化が期待できる。惑星表面に受信機ユニットを2機以上投下し,地球からの観測を介さずに,惑星表面上のみで軌道決定観測系を構築する。技術課題は「構成装置・データ処理の単純化」であり,本研究課題の成果を応用できる。 平成21年度は、既設地上局と連携した3局体制で、VLBI観測系を構成する計画を進めた。しかしながら技術的理由により3局による同時受信までは実現に至らなかった。当初予定していたスペクトラムアナライザによる受信電波の簡易解析手法では、アンテナの受信能力が十分に高くないと受信ノイズの影響で解析出来ないことが判明したためである。本課題では最終的に構成装置の単純化をめざしているため、簡易的な受信システムで目標とする軌道決定を実現することを優先に考えている。そのため、平成21年度は受信系機器の構成を見直すことに専念し、スペクトラムアナライザ以外の測定機器で解析する手法に関して実験を行った。 成果として、小型移動式の受信アンテナ装置を開発し、複数の観測地における受信試験で衛星電波を正常に受信できることを確認した。またスペクトラムアナライザを使用しない電波解析システムを構築し、観測値を取得して評価した。今後の研究において、複数拠点で同システムを同時使用することで、軌道決定が実現できることが期待できる。
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