国際海事機関(IMO)や国際試験水槽委員会(ITTC)において緊急の検討課題とされているパラメトリック横揺れについて、その定量的数値予測法の構築、および発生防止手段の検討を行った。 パラメトリック横揺れ発生の主要因である波浪中での復原力変動と横揺れ減衰力について、非線形影響が顕著となる大振幅動揺域まで計測可能な専用の強制横揺れ試験装置を製作した。この動揺試験装置を用いて、0度から30度の大角度まで波浪中での復原力変動計測を行い、横揺れ減衰力についても同様に大振幅動揺かつ広範囲の周波数について計測を行った。その結果、復原力変動については横傾斜が縦運動に与える影響が顕著であること、復原力変動振幅は横傾斜角に対して非線形に変化することを確認した。また横揺れ減衰力については、従来から用いられている自由横揺れ試験の結果と大きな相違が見られること、波浪中での横揺れ周期を考慮した取扱いが必要であることを確認した。 続いて1自由度横揺れモデル、および上下揺れ、縦揺れ、横揺れの3自由度連成モデルを構築し、自由航走模型実験との比較を行った。その結果、時間ステップ毎の没水断面に対する流体力を計算する3自由度非線形ストリップ法に強制横揺れ試験より得られた横揺れ減衰力を用いることで、向波中パラメトリック横揺れの定量的予測が可能であることを確認した。 これと並行して、アンチローリングタンクによるパラメトリック横揺れ防止の検討を行った。具体的にはタンク内流体の挙動を粒子法により数値計算し、1自由度横揺れモデルと組み合わせることで、パラメトリック横揺れ防止効果に与えるタンク形状影響を検討した。その結果、ダクト端からの渦生成を抑える低減衰形状を採用することで、タンク水量を増やすことなく防止効果が増大することを確認した。
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