研究概要 |
近年,地球温暖化の影響やエネルギー資源の枯渇により氷海域における経済活動が活発化してきている.氷海域の活動は非常に危険が伴うにも関わらず,通常海域にくらべ現象が非常に複雑であることから氷海域での船体構造の設計指針の多くが経験則や実験則に基づいており,理論的根拠が乏しく,今後需要が見込まれる新造船の開発に困難が生じるおそれがある.そこで,複雑な船体と氷の相互影響を理論的に解明し耐氷船体構造の設計指針(疲労強度推定法)の構築を目指すことを最終ゴールとし,本研究では疲労強度予測のためのそれぞれの課題に対して理論的考察に基づいた数値解析による指定を行った.具体的には,1) 様々な氷の砕氷時の機械的性質に関するデータベースの充実化を行い,また,平板氷の割れ破壊の理論的考察を行った.2) 3自由度の船体運動を考慮したより詳細な氷荷重推定が行えるプログラムを開発し,3) 氷条件(氷厚や強さ)と船の航行条件(船型や船速,旋回運動など)の違いによる氷荷重を推定し,船体に作用する氷荷重頻度分布の予測を行った.これにより,危険部位の構造応答解析が実施でき,さらに累積線形被害則やき裂伝播解析を用いた疲労解析が可能となる.本研究では氷荷重下での疲労設計に行う上で最も上流側にあり重要である氷荷重の推定に重点を置き研究を進め,一連の研究は疲労設計だけでなく,海氷船舶の砕氷効率の高い構造最適設計や運動性能などにも利用でき非常に有用である.
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