本研究では現場観測ツールとしての小型・軽量・高精度の塩分センサの開発に向け、表面プラズモン共鳴技術を応用したシステムを試作し、その評価と実用への検討を行った。 本年度は昨年度に課題として残った現場計測時における計測の安定性に関する再検討を行い、検定バスを用いた計測安定性の評価と精度評価に重点を置いた実験を行った。実験は基本的に独立行政法人海洋研究開発機構のむつ研究所にある検定精度が既知のセンサ検定施設で実施し、屈折率から塩分を導出する経験式の作成も考慮した。 結果として、フローセルの導入を廃止し、センシング部に直接海水を接触させる方式をとり、リファレンス計測のための暗室空間を確保するカバーを工夫することで、前年度明らかとなったモジュール単体の精度(水温計測精度が0.01℃の場合の塩分0.02程度の計測精度)をユニットとして維持することが可能であることが確認できた。 また、検定バスによる実験から本センサモジュールに対する、計測した屈折率から塩分を導出するための経験式を導出することができた。 今回採用したセンサモジュールは小型・軽量・安価なものであるが、本研究から現場利用センサとしての利用が十分可能であることが確認できた。しかしながら前述のモジュール特性の維持に起因して、その強度にはあまり高くない。その結果、利用が水圧の低い表層に制限されるという欠点を併せ持つ。現在、同様な機能をもつ国内産モジュールを製作しているメーカーと協議を進めており、高強度のモジュール製作とその機能評価に向けた協議をはじめている。その開発の際には本研究の成果が有益となると言える。
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