研究概要 |
深海から揚鉱されるコバルトリッチクラスト鉱石は, 有用金属を含まない核岩や海底基盤岩を多量に含んでおり, 製錬処理の前にこれらの岩石を除去する選鉱処理が必要であるが, 1990年代に調査が開始された鉱石であるため, 高効率な選鉱プロセスはいまだ確立されていない。申請者はこれまでに, 粗粒子の選鉱に比重選別が効果的であることを見出したが, 微粒子・細粒子の選別精度が低いことが問題となっている。そこで本研究ではコバルトリッチクラスト鉱石の粉砕産物のうち, 微粒分についての浮遊選鉱法による分離, 細粒群のジグ選別および表面改質前処理を行った試料の気泡導入ジグ選別(ハイブリッドジグ)を検討し, 効率的な総合処理フローを提案することを目的として研究を実施している。 本年度は初年度であり, 濡れ性の差を利用した選別法である浮遊選鉱め微粒群への適用と細粒群の表面処理の予備的検討を実施した。表面の電気化学的特性の差を利用して鉱石または不要岩石のどちらか一方を疎水化する方法を検討したところ, 表面電位に起因する静電気相互作用力により選択吸着する試薬を見出した。また, クラストと岩石の標準電位の中間に酸化還元電位を持つ試薬が岩石に付着し疎水化することを見出した。これらの試薬による表面改質後に浮遊選鉱することで高品位のクラストを回収できた。また, この成果を細粒群の表面改質に適用可能であることを見出した。以上のように, おおよそ研究実施計画通りに研究を順調に進めることができた。
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