研究課題
平成20年度で得られた主な成果として、次の3つが挙げられる。(1)OBSデータからS波速度を推定P屈折波とPPS屈折波の走時差と、PS屈折面の深度から、付加体内部の平均的なS波速度(Vp/Vs)を推定した。その結果、トラフ軸から地震性分岐断層に近づくにつれて、Vp/Vs(ポアソン比)が増加することが分かった。このVp/Vsの増加は、間隙水圧の増加に伴って、薄い間隙が増加したことを反映していると考えられる。この結果は、反射法地震探査データから推定された低P波速度異常帯と整合的である。(2)OBSデータからS波偏向異方性を推定OBS受信記録において、直達波の卓越する方向をラディアル成分として、水平動2成分のOBSデータからラディアル成分とトランスバース成分の受信記録を計算した。ラディアル成分がSV波、トランスバース成分がSH波に対応するとし、SV波とSH波の走時差からPS変換面より上位層のS波偏向異方性を計算した。さらにPS変換波のエネルギーの卓越方向を計算し、S波の減衰に伴う異方性を推定した。その結果、地震性分岐断層を境界として、PS変換波のエネルギーの卓越する方向が大きく変化していることが明らかとなった。今年度は、これらの解析で得られた結果に対して、岩石物理モデルにより定量的に地下応力を推定することを試みる。(3)反射法地震探査データから得られた速度モデルを用いて地応力と間隙水圧を推定三次元反射法地震探査データから推定されたP波速度データとOBSデータから推定されたS波速度データを用いて、付加体内部の応力と間隙水圧を推定した。現在は、速度データに対して岩石物理モデル(申請者が開発した既存の手法)を用いて、初期結果が得られた段階である。今後は、手法に改良を加えて、結果が得られ次第、国際誌に投稿することを考えている。
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Geophysical Research Letters 36, L06303
ページ: doi 10. 1029/2008GL036974
Island Arc
Journal of Geophysical Research (Solid Earth) 113, B11401
ページ: dol : 10. 1029/2007JE005002