研究課題
地下応力を推定する手法の開発として(1) 海底地震計(OBS)データから間隙水圧を強く反映するとされるS波速度(Vp/Vs)の抽出、(2) 主応力の方向に依存するS波偏向異方性の推定、(3) P波速度とS波速度を統合して有効応力と間隙水圧を推定する研究を実施した。(1) S波速度(Vp/Vs)の推定:P屈折波とPPS屈折波の走時等から、付加体内部の平均的なS波速度(Vp/Vs)を推定した。今年度は、その推定精度を向上させる手法を開発した。南海トラフ付加体に対して本手法を適用した結果、トラフ軸においてVp/Vsが大きく変化することが分かった。これは付加作用に伴う堆積物の圧密を表していると考えられる。さらにトラフ軸から地震性分岐断層に近づくにつれて、Vp/Vsが増加している。これらの傾向を、岩石物理モデルを用いて説明した。(2) S波偏向異方性を推定:OBS受信記録において、PPS屈折波のParticle-motionや、SV波とSH波の走時差から、PPS変換面より上位層のS波偏向異方性を計算した。その結果、地震性分岐断層を境界として、変換波のエネルギーの卓越する方向が大きく変化していることが明らかとなった。S波の偏向異方性は地下応力に関係していることから、本手法を用いれば、簡便に地震性分岐断層のモニタリングに用いることができる可能性が示された。(3) P波速度とS波速度を用いて地下応力(間隙水圧)を推定:三次元反射法地震探査データから推定されたP波速度と、OBSデータから推定されたS波速度を用いて、付加体内部の応力と間隙水圧を推定した。P波速度とS波速度からは弾性定数が個々に決まるため、既存のP波速度を用いる手法よりも、精度が向上したことが考えられる。一方で、Vp/Vsがスケールに依存することが分かり、これを解決する研究を現在も継続中である。
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ページ: 電子媒体での発表
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