研究課題
今年度は、赤泥のAs(V)吸着機構について、硫酸系廃水と硝酸系廃水とを比較しながら検討した。pH4.5にてAs(V)を吸着させた場合、硝酸系廃水では、一旦As(V)が赤泥中に吸着されるものの、時間の経過と共に赤泥中のAl分が溶出し、それと共にAs(V)も再溶出する傾向が確認された。一方、硫酸系廃水では、As(V)の吸着速度は硝酸系廃水に比べて遅いものの、時間の経過と共に溶出したAlが再度赤泥中に取り込まれる様子が確認され、As(V)の再溶出は確認されなかった。また、硫酸系廃水においては、硫酸濃度が時間経過と共に緩やかに低下し、赤泥中に取り込まれている様子が確認された。硫酸系廃水を用いてAs(V)を処理した赤泥をXRDにて分析したところ、処理の前後で赤泥自体には変化が見られなかった。以上の実験的事実から、硝酸系廃水の場合には、As(V)は赤泥のAl分に一旦吸着し、時間経過に伴うAlの溶出と共に、As(V)も再溶出するのに対し、硫酸系廃水の場合には、As(V)および硫酸が赤泥のAl分に吸着し、一部Alの溶出と共にAs(V)も再溶出するが、その後、硫酸が吸着したサイトにAl分やAs(V)が再度取り込まれることによって、時間経過に伴うAs(V)の再溶出は認められないのではないかと推察した。また、赤泥中の鉄分およびAl分がそれぞれAs(V)吸着にどのように寄与するのかを確認するために、あらかじめpH3程度にて赤泥中のAl分を溶出させた脱Al赤泥を作成し、As(V)の吸着実験を行った。その結果、As(V)廃水に脱Al赤泥を添加した場合にはある程度のAs(V)吸着が可能であったが、予め脱Al赤泥を廃水中に水和させてからAs(V)を添加させた場合にはほとんど吸着しなかった。このことから、赤泥中のFe分は、水和した場合にはほとんどAs(V)吸着能が存在しないことが明らかとなった。
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Environmental science & technology vol.44, no2
ページ: 638-643