本研究では、マテリアルフロー分析における素材の分離・回収モデルを構築したとともに、昨年度開発した易解体設計評価ツールを比較的部品点数の多い製品においても適用可能なツールに改善し、改善されたツールを用い資源価格による最適解体手順の変化を分析した。分析にあたっては、携帯電話、電気ポット、アイロンをケースとして用いた。貴金属やレアメタルが含まれる携帯電話中の基板の価値の変化によって、最適解体手順が変化することが示され、ベースメタルの価格の変化は、これら小型の製品においては、最適解体手順を変化させるものではないことが分かった。 マテリアルフロー分析における素材の分離・回収モデルでは、磁性を有するフェライト系ステンレスが炭素鋼と分離されずに回収されていることに着目し、その合金成分であるCrのマテリアルフローの観点により炭素鋼中でのCr濃化シミュレーションを行い、素材サイクル全体でのリサイクル性を評価した。また、鉄鋼材のスクラップに銅が混入することが指摘されていることより、銅の素材価格を考慮し、素材価格の上昇が鉄スクラップ中への銅の混入を低下させる様子を表わすモデルを構築した。これにより、マクロな観点から、分離・回収における収益が上昇することによって、最適解体手順が進み、分離度が高まることが確認できた。 また、解体設計評価ツールでは、製品構造を表わすJ-P matrixのデータからAND/ORグラフを描画するソフトを作成し、分析ならびに考察を容易にした。さらに、最適解体手順の探索はNP完全な最適化問題であることから、なるべく分析にかかる計算時間が短くなるようなアルゴリズムとするため、クラスタリング手法を追加することで改善した。これにより、実際有限時間で解を得ることが困難と予想された自動車のような1万点を超える製品についても、2時間程度で解を得ることが可能であると想定された。
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