研究は、耐粒子線照射特性に優れるナノ組織制御型タングステン合金の核融合炉プラズマ対向機器への適用を目標とし、実機における複合応力負荷とヘリウムイオン照射による表面損傷挙動の関係に着目し、以下3つの事項を達成することを目的とする。 (1)実負荷条件を考慮した複合応力負荷下ヘリウムイオン照射によるナノ組織制御型タングステンの表面損傷挙動の評価とそのメカニズムの解明 (2)複合応力負荷下におけるナノ組織制御型タングステンの表面損傷挙動の解析予測モデルの構築 (3)実負荷条件における複合応力負荷を考慮したナノ組織制御型タングステンの最適材料設計指針の策定 平成21年度は、平成20年度に製作したイオン照射装置の最高試験温度を、常用1000℃までとするための改造を施し、その性能確認をした。この装置を用いて、純タングステンに対し、応力負荷有り/無しの条件においてヘリウムイオンを照射し、表面損傷挙動と応力負荷状態との関係を評価した。また、平成20年度に製作したナノ組織制御型タングステンに対し、応力負荷無しの条件においてヘリウムイオンを照射し、表面損傷挙動の照射条件依存性を評価した。その結果、照射温度約500℃においては、純タングステンに比べて、ナノ組織制御型タングステンにおける極めて優れた表面損傷耐性が見出された。また、この温度領域においては、応力負荷により表面損傷がわずかに促進される傾向が観察された。一方、照射温度900℃においては、ナノ組織制御型タングステンにおいても、ヘリウムのフルエンスの上昇とともに表面損傷が生じ、材料表面が著しく劣化することが明らかとなった。照射温度900℃における応力負荷の影響については次年度評価する予定である。
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