次世代高速炉や核融合ブランケットなどで粒子充填層型の炉心が提案されている。これらが社会に受け入れられるためにはその安全性の担保が必須であり、そのため充填層の内部構造診断や熱流動および熱機械特性を明らかにすることは重要である。本研究では、粒子充填層の内部構造を可視化し得る、音波の非線形性を利用した超音波CTシステムを開発し、その内部構造を計算空間に再現することで充填層の熱流動および熱機械特性を数値解析により明らかにすることを目的とする。 超音波診断による充填層内の内部構造可視化実験では、2つの周波数の超音波(一次波)および非線形作用により生ずるそれらの差音(パラメトリックアレイ)を利用して対象領域のCT像を得るが、20年度に指摘した固体(アクリル)と周囲流体(水)との間の音波の屈折率の違いから生じるCT像の劣化を改善するには至らなかった。問題になるのは屈折率の違いだけではなく、パラメトリックアレイ強度の低さ、固体内での減衰の大きさに大きく影響し、加えて振動子径の大きさによる空間分解能の限界も関係していると考えられる。パラメトリックアレイの強度は2つの一次波の強度に依存し、この2つの一次波は同一の振動子から発振される。今回用いたものよりも良好な周波数特性を持つ振動子の使用により改善されると考えられるが、その他の問題に対しては即答できる解決策はなく、依然として課題が多いと言える。粒子充填層内流動の数値解析では、20年度に開発したLES(Large-eddy Simulation)流動解析コードを並列化し、計算領域の大規模化および計算速度の高速化を図った。これにより大規模な計算機クラスターを用いることで粒子充填層の詳細計算が行える目処は立ったと言える。しかし温度場の導入までには至らず、こちらも課題を残す結果となった。
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