研究概要 |
球状トカマク(ST)において確認されている、外部磁場のいた磁力構造下での電子サイクロトロン加熱(ECH)による自発的なプラズマ電流発生と急増(電流ジャンプ)現象の物理機構の解明を日的として、QUEST装置にECHを適用し電流立ち上げ実験を行った。8.2GHz, 60kWのマイクロ波入射下でのパラメータスキャンの結果、外部垂直磁場16mTの下で0.8kA程度のプラズマ電流生成が確認された。可視光高速カメラ画像から、上記の放電では閉じた磁気面形成は確認されていない。また、LATE(京大)、TST-2(東大)およびCPD(九大)といった小型STで確認された電流ジャンプ現象も未だ確認されていない。しかし、今後の入射電力系の増力によって、CPDでの実験結果の外挿から予測される閾値(200kW)を超える加熱入力が期待できるので、今後は電流ジャンプ放電の実現が十分に可能であると考えている。電流ジャンプにおけるプラズマ電流の発生、増加には高速電子が重要な役割を担っていると考えている。この度の実験で得られた開いた磁場配位におけるプラズマ電流の垂直磁場依存性は、高速電子の軌道計算から推測されるプラズマ電流値と定性的に一致し、高速電子の寄与を裏付けている。電流ジャンプを目指した放電実験と並行して、プラズマ電流分布推定のための磁気計測用磁束ループ系、および電流ジャンプを牽引すると推測される高速電子束の空間分布計測用の指向性ラングミュアプローブを設計、製作した。長ストロークのプローブシステムを採用したので、プローブチップはプラズマ中心付近まで到達できる。プラズマ電流が低く、開いた磁場構造が維持された状況下ではプローブによる擾乱が比較的小さいと思われる。広領域に亘る高速電子分布計測が可能であると期待される。
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