研究概要 |
核融合炉開発を骨指したプラズマ閉じ込め装置では, プラズマと壁との相互作用(PWI)による不純物の発生と, 発生した不純物による再堆積層の形成が繰り返されている. 特に堆積層が形成された壁面では, 堆積層自身が剥離し, 不純物となるだけでなく, 水素同位体捕捉特性が初期状態と比較して大きく変化することも考えられ, 結果としてプラズマ制御へ影響を及ぼすことが予想される. 核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)では, 黒鉛性ダイバータタイルの表面に, 金属と炭素材が混合したMix-material再堆積層の形成が確認されており, この層は脆く剥離し易い状態であることがわかっている. 今年度は, 透過型電子顕微鏡を用いた微細構造解析により, ダイバータタイル上の堆積層がどのような過程を経て形成されたものであるのかを過去の放電履歴と照らし合わせて判定し, プラズマ粒子捕捉や不純物放出の可能性について検討した. 結果より, 再堆積層は100nm〜200nmの様々な厚みを持つアモルファスの構造が積層して形成されていることがわかり, Cなどの軽元素が主成分の層や, Feなどの金属元素が主成分の層が確認された. このような層構造が形成される原因は, 堆積元素や堆積速度が放電の種類や時間によつて変化したためであると考えられる. つまり, 壁コンディショニングやプラズマ放電条件によってダイバータタイル上に飛来する堆積物の組成や構造が異なるため, このような層構造が形成されたと示唆される. これとは対照的に, スパッタリング損耗が支配的に発生している場所では, 堆積層は全く確認されなかったが, 黒鉛タイルの結晶組織が大きく変化していることも新たに発見された. 今後は, 微細構造解析の結果を整理すると共に, 再堆積層からの不純物発生機構について検討を進める予定である.
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