研究概要 |
本研究は,大型ヘリカル装置(LHD)で形成されたMix-material再堆積層の微細構造解析を行い,そのプラズマへの影響を理解することを目的としている.平成20,21年度において実施した微細構造解析データによって,炭素ダイバータタイル上に形成される堆積層の物理的特性に関してある程度まとまった知見が得られたため,平成22年度は,当初本計画にはなかったが,新しいダイバータタイルのLHDへの適応を目指し,タングステン被覆炭素ダイバータタイル(Wタイル)のLHDにおける照射試験を実施した.Wタイルを使用することで,Mix-material再堆積層の成長を抑え,望まれない不純物の捕捉や再放出を制御できる可能性があり,本研究をまとめるにおいて重要な知見となることが期待された.また,本年度当初に計画していた高熱負荷試験装置(ACT)における熱負荷中のFeなどの不純物放出の分光分析に関しても,LHD放電中にWタイルを分光器で直接監視することで,W不純物のLHD真空容器内への飛散過程を調査した.堆積層中のFeとWタイルからのWの放出機構は異なるものの,放出された不純物元素の輸送研究としては十分な共通点がある.また,Wタイル周辺の炭素タイルを詳細に表面分析することで,一枚のWタイルから放出されたW元素がどのような分布で飛散しているのかについての知見を得ることもできた.結果では,Wタイルを使用することで,タイル自体への水素同位体の捕捉量は炭素タイルと比較して抑制できるものの,プラズマフラックスの少ない領域では同様なMix-material再堆積層が形成されており,Wタイルの部分的な導入では再堆積層の形成と剥離を抑制できないことが明らかになった.また,放出されたW不純物は,ダイバータアレイに沿って約1メートルの領域に集中して堆積しており,それほど遠い距離に拡散されてはいないことが示された.
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