本研究は濃厚電解質溶液中のネプツニウムの溶存状態を分光分析法を用いて明らかにすることを目的とする。平成21年度はネプツニウムを含む試料の蛍光分光分析と水和物溶融体のラマン分光分析、及び、ウランとネプツニウム試料を含有する試料のラマン分光分析に関する基礎試験を行った。ネプツニウムを約0.01mol/L含む硝酸カルシウム水和物溶融体を蛍光分光分析用の石英セルに分取した。蛍光分光光度計は現有機器(日立製作所製、F-2500)を使用した。室温にて蛍光分光分析を行ったが、蛍光は検出限界未満であった。ネプツニルイオンのラマン分光分析のための基礎実験を行った。ラマン分光光度計は現有機器(日本分光製、NR-1100)を使用した。まずはネプツニウムを含まない、水和物溶融体自身のラマンスペクトルを測定した。硝酸カルシウム水和物溶融体を石英セルに分取した。波長514.5nmのアルゴンレーザーを試料に照射し、試料からのラマン光を測定した。測定により得られたラマンスペクトルを解析し、ラマンシフトの度合い及びラマン光強度を評価した。水和物溶融体中の硝酸イオンの分子振動を評価した。波数720cm^<-1>付近に水和している硝酸イオンの分子振動に対応するピークが観測され、波数740cm^<-1>付近にカチオン(カルシウムイオン)に配位している硝酸イオンの分子振動に対応するピークが観測された。水和物溶融体の含水量が減少するにつれ、波数740cm^<-1>付近のピーク強度が波数720cm^<-1>付近のピーク強度に比べて相対的に増加した。このことは、水和物溶融体を構成するカチオン-アニオン間の相互作用が増していることを示し、ラマン分光分析結果と水和物溶融体の含水量の関係が明らかになった。ウランとネプツニウム試料を含有する液体試料のラマン分光分析を試行し、O=U=O、O=Np=O、の分子振動を確認した。
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