^<237>Npの硝酸塩を調製し、硝酸カルシウムの水和物を添加することにより、Np濃度約0.01Mの液体試料を調製した。この液体試料に溶存した、ネプツニルイオン(NpO_2^+、NpO_2^<2+>)のラマン分光分析を行った。ラマン分光光度計は、現有機器(日本分光製、NR-1100)を使用した。硝酸カルシウム水和物溶融体試料を石英セルに分取し、励起波長514.5nmのアルゴンレーザーを試料に照射し、試料からのラマン散乱光を測定した。測定の波数幅は0.2cm^<-1>、スキャン速度は120cm^<-1>/分である。測定により得られたラマンスペクトルを解析し、ラマンシフトのエネルギーを評価した。ネプツニルイオンのO=Np=Oの全対称伸縮振動はラマン活性であり、Np(VI)とNp(V)に関するラマンシフトを確認した。Np(VI)のラマン振動について、ラマンピークのエネルギーは含水量に対して不感であった。しかしながら、1M硝酸溶液中におけるNp(VI)のラマンピークに対しては僅かながらエネルギーシフトが観測された。このことはネプツニルイオンの赤道面において、水和水と硝酸イオンの交換反応が起こったことを示唆する。ネプツニウムの比較対象として、ウラニルイオン(UO_2^<2+>)のラマン分光分析を行った。ウラニルイオンのO=U=Oの全対称伸縮振動についてラマンシフトのエネルギーを評価したところ、硝酸カルシウム水和物溶融体系と1M硝酸系とでは、ラマンシフトのエネルギーは同一であった。このことから、ウランよりもネプツニウムの方が、赤道面の水和水-硝酸イオンの配位子置換反応に対してラマンシフトのエネルギー変化が敏感である可能性が示唆された。
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