ガンマ線照射による水溶液中での複合ナノ粒子生成プロセスにおいて、水溶液の条件を変化させることによりガンマ照射で生成した中間活性種による貴金属イオンの還元反応と照射終了後の未反応イオンの化学的還元反応を制御することを試みた。水溶液の温度等の条件による粘度の変化がナノ粒子生成過程に与える影響を中心に検討した。 ガンマ線や電子線を照射して貴金属複合ナノ粒子を合成するプロセスでは、吸収線量率と吸収線量、界面活性剤の種類・濃度や水溶液の温度などの条件を変化させることにより金属イオンの還元速度や量を制御し、粒子サイズなどを制御することが可能である。本研究では水溶液の温度などの条件による粘度の変化に着目して金ナノ粒子生成の過程について検討した。 水溶液中の金イオンが還元されると表面プラズモン吸収によるピーク(520nm付近)が現れることを利用し、ガンマ線照射後の塩化金酸-ポリビニルアルコール(PVA)水溶液の紫外-可視吸収スペクトルの経時変化から金ナノ粒子の収量の時間変化を測定した。室温で照射した試料では、照射終了後8分以降で金ナノ粒子生成よる表面プラズモン吸収のピークが現れ、照射終了後40分前後を境に2つの速度成分が観測された。照射中、照射後を通して40℃で保持した試料では、照射終了直後に既に金ナノ粒子生成によるピークが現れており、室温で照射した試料に比べて照射後40分まではより速い立ち上がりが見られた。しかし照射後60分以降の挙動には両者の間で差が見られなかった。PVA水溶液の粘度測定の結果では室温と比較して40℃で保持した試料では粘度が低下したため、金イオンの還元反応が促進され金ナノ粒子の成長が速やかに起きたと考えられる。
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