ガンマ線照射による水溶液中での複合ナノ粒子生成プロセスにおいて、水溶液の条件を変化させることによりガンマ照射で生成した中間活性種による貴金属イオンの還元反応と照射終了後の未反応イオンの化学的還元反応を制御することを試みた。 ガンマ線や電子線を照射して貴金属複合ナノ粒子を合成するプロセスでは、吸収線量率と吸収線量、界面活性剤の種類・濃度や水溶液の温度などの条件を変化させることにより金属イオンの還元速度や量を制御し、粒子サイズなどを制御することが可能である。本研究では水溶液の温度とpHの違いによるの変化に着目して複合粒子形成前の金ナノ粒子生成の過程について検討した。 水溶液中の金イオンが還元されると表面プラズモン吸収によるピーク(520nm付近)が現れることを利用し、ガンマ線照射後の塩化金酸-ポリビニルアルコール(PVA)水溶液の紫外-可視吸収スペクトルの経時変化から金ナノ粒子の収量の時間変化を測定した。NaOH添加により高pH側にシフトさせると、放射線照射後2分から数時間の範囲では金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴吸収ピークの立ち上がりが速くなった。 放射線照射による金ナノ粒子生成過程での凝集特性を調べるため、水溶液の温度とpHを変化させてゼータ電位を測定した。ゼータ電位の絶対値は高pH側になるにつれて減少し、pH8付近で0近くまで減少していることから、表面電位の変化により生成した金ナノ粒子前駆体が凝集しやすくなり金ナノ粒子の生成が促進されたと考えられる。
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