研究概要 |
本研究では、大阪大学核物理研究センターRCNPのサイクロトロン加速器施設のビーム・スウィンガー・マグネットを用いて、180度方向の陽子入射核反応に対する中性子微分断面積の測定と運動源模型の構築を行うことを目的とする。平成21年度に測定したエネルギー140MeVの陽子入射による炭素、鉄及び金ターゲットからの180度方向の中性子エネルギースペクトルは主に以下の3つの成分からなることがわかった。1)中性子エネルギー4MeV以下における蒸発過程からのスペクトル、2)中性子エネルギー4MeVから10MeVにおける蒸発過程からのスペクトル、3)中性子エネルギー10MeV以上の前平衡過程からのスペクトル。特に1)と2)の蒸発過程成分が2つに分かれる過程は今までの180度方向以外の測定データでは見られない事象である。また180度方向の中性子エネルギースペクトルを3つのマクスウェル型の関数の和からなる運動源模型でフィッティングを行った。その結果、140MeVの陽子入射による180度方向の中性子生成スペクトルに関して、運動源模型のパラメータである核温度を導出することができ、粒子輸送計算コードにおける核反応モデルの改良のための指針を与えた。 以上の3年間の科研費研究の成果を取りまとめ、「Measurements and Monte Carlo calculations of neutr on production cross-sections at 180° for the 140 MeV proton incident reactions on carbon, iron, and gold」というタイトルでNuclear Instruments and Methods in Physics Research Section Aに論文投稿し受理された。またInternational Conference on Nuclear Data for Science and Technology(ND2010)で口頭発表し、広く成果を公表した。
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