本研究では、次の3項目を研究目的とする。(1) 気体分離多孔質体上にTiO2膜をコーティングすることで、反応場で速やかに生成物と未反応物の分離拡散を行い、TiO2光触媒の反応性能向上を図る。(2) 反応場で分離を行う分離・反応融合型実験装置を設計・製作し、実験的に検証する。(3) 多孔質体表面及び内部での反応・分離拡散について数値解析を行い、理論的にメカニズムを解明する。そのために今年度は、<課題1>気体分離多孔質体へのTiO2膜コーティング手法の確立、<課題2>リアクター内物質拡散・反応現象の数値解析及び装置デザイン・運転条件の決定、を課題に掲げて研究を行った。その結果、これまで未検討である気体分離多孔質体へのゾルゲル・ディップコーティング法でのTiO2膜コーティング技術について検討し、特にディップコーティング時の引き上げ速度が生成TiO2膜の性状に及ぼす影響を、SEMやEDXといった表面分析により明らかとした。TiO2膜のコート量や亀裂の生成状態がTiO2膜のCO2改質性能や透過性能を決定することが明らかとなり、本研究で提案する分離・反応融合型光触媒リアクターの性能向上のための設計指針を得た。また、これまで未解明の多孔質体内およびTiO2膜上のガス拡散を考慮したTiO2膜コーティング多孔質体リアクター内反応現象を把握するため、多孔質体内のクヌッセン拡散の拡散係数を任意に設定すると共に多孔質体領域前後の設定圧力差を変化させることで多孔質体内およびTiO2膜上の化学反応を伴うガス拡散現象を数値解析で評価したところ、各々の条件で多孔質体内およびTiO2膜上の生成物質の質量分率・拡散傾向が異なる傾向が認められ、分離・反応融合型光触媒リアクターの性能向上のための装置デザイン・運転条件指針を得た。
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