本研究では、次の3項目を研究目的とする。(1)気体分離多孔質体上にTiO_2膜をコーティングすることで、反応場で速やかに生成物と未反応物の分離拡散を行い、TiO_2光触媒のCO_2改質性能向上を図る。(2)反応場で分離を行う分離・反応融合型実験装置を設計・製作し、実験的に検証する。(3)多孔質体表面および内部での反応・分離拡散について数値解析を行い、理論的にメカニズムを解明する。そのために今年度は、<課題3:拡散促進およびCO_2改質性能向上を最大限得る実験条件の抽出>と<課題4:リアクター内物質拡散・反応メカニズムの理論確立>、を課題に挙げて研究を行った。前年度の取り組みから、分離・拡散を伴うCO_2改質条件で分離・拡散を伴わない場合と比べてCO_2改質性能の向上が認められたため、今年度はさらなるリアクターのCO_2改質性能向上を図るべく、前年度使用した気体分離多孔質体のシリカ層部分のコート面積を縮小したタイプを使用し、(反応性能/分離性能)の比率をより反応性能重視にシフトしてCO_2改質性能の評価を行ったところ、結果的にCO_2改質性能は前年度より低下した。TiO_2膜を気体分離多孔質体にコーティングする際に、表面層であるシリカ層の面積がTiO_2膜の固着の程度ならびに表面積の大きさに影響することが示唆された。また、リアクター内の水蒸気濃度と生成物濃度の経時変化を調べたところ、水蒸気濃度が低下する時に生成物濃度は増加することが分かり、リアクター内での還元反応の進行具合がこのマスバランス評価により、解明できた。この2ヵ年で得られた研究成果を総括すると、次の2点である。(1)反応場で分離を行うことがTiO_2光触媒のCO_2改質性能の向上に効果的であることを実験的に立証した。(2)多孔質体表面および内部での反応・分離拡散現象のメカニズムを理論的に解明した。
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