ヒストン遺伝子は重複遺伝子として知られています。ヒトなどの高等真核生物では重複しているヒストン遺伝子間にもバリエーションがあり、数アミノ酸が異なるヒストンバリアントが存在します。私が研究材料としている分裂酵母のゲノムには、同じアミノ酸をコードするヒストン遺伝子のみ存在しています。そのため、分裂酵母では遺伝子間のバリエーションではなく、転写パターンにバリエーションをつけることで役割の異なるヒストンH3を作り出しているのではないかと仮説を立てました。そして、転写パターンの違いが3つのヒストン分子の修飾などに与える影響について明らかにすることを目的としています。平成20年度は、個々のヒストンH3遺伝子をGFPタグ標識して免疫沈降を行いました。各ヒストンH3蛋白質の細胞周期特異的な複合体形成を明らかにするため、非同調細胞、S期同調細胞、G2期同調細胞を用いてGFP抗体で免疫沈降実験を行いました。S期とG2期同調細胞から、ヒストンH3の免疫沈降パターンに違いが見られました。この細胞周期におけるパターンの違いについて引き続き解析していきたいと思います。また、ヒストン遺伝子を恒常的に高発現させると細胞が致死になることが分かりました。この細胞の致死性は、ヒストン転写活性化因子Ams2の発現によっても引き起こされました。この結果は、ヒストン遺伝子の細胞周期特異的な発現が細胞の生育に重要であることを示しています。この現象については、今後ヒストン転写制御の観点から解析を進めていく予定です。
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