研究概要 |
本研究の目的は降海型サクラマスを対象生物として, 死亡率(海洋生活期の死亡率)と体サイズ(親魚の体サイズ)双方の性差の進化的関連性についての知見を提供することである。 今年度の野外調査の主な項目は, 海洋生活期の死亡率を検証するために必要なデータであるスモルト(降海型幼魚)の性比を調べること, および次年度以降の調査情報として重要な産卵床の流程分布(繁殖区間)の調査と産卵床数からの雌親魚数の推定である。なお, 調査河川の選定であるが, スモルトの密度や河川のサイズなどに着目した予備調査の結果から, 別々川(道央太平洋側)と奥津内川(道南太平洋側)を主要な調査河川に選び, 今年度の調査(スモルト期と繁殖期)を行った。 スモルト期の調査の結果, スモルトにおける雌の割合は, 別々川では71.3%(N=87)であったが, 奥津内川では94.9%(N=59)となり, 両河川間で大きな差があることが明らかとなった。また, 繁殖期の調査の結果, 別々川では河口から(上流方向で)約5〜8kmの3km程度の区間が主要な産卵場になっていることが分かり, 産卵床数から推定して, 今年度は30尾ほどの雌親魚が繁殖したと考えられた。また, 奥津内川では, 同調査により河口から1km付近より上流側が主な産卵域になっていることが明らかとなり, 産卵床数から今年度は少なくとも20尾ほどの雌親魚が産卵したと推定された。 なお, 本研究に関連する研究成果をJournal of Fish Biology誌(Morita, Tamate et.al.2009)に発表した。
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