本研究では特徴的な色彩変化を示すルリビタキを材料に、その外観の色が、雄間闘争における信号としてどのように機能するかについての進化生物学・行動生態学的な研究を行った。本種の特徴は、地味な色彩(茶色)の雄が、後年、派手な色彩(青色)へと、中間的な段階を経ずに、劇的に外観が変化することである。しかし、本種のような中間型が存在しない羽色についての検証はほとんどない。本研究では、この「中間型不在」の適応的意義を、実験的に検証することを目的とした。具体的には、なわばりへの進入者に対するなわばり所有者の雄の反応が、中間型の侵入者と非中間型の侵入者で異なるかどうかを検討する実験を行い、中間的な装飾形質が持つ不利益を検証する実験を行った。本年度は、実験用の提示モデルの開発・改良の完了と、本実験の実施を行った。 1. このモデルとは、鳥類の視覚を考慮して独自に開発したものである。地味な色彩〜中間的な色彩〜派手な色彩へと、色の派手さが異なる複数のバリエーションを作成でき、実験手法を確立できた。 2. 野外調査地において、実験のための個体群の追跡観察および本実験を実行した。侵入雄を模してこれらのモデルをなわばり雄へと提示することで、なわばり雄によるモデルへの攻撃反応を測定した。本年度は、一定数のサンプルを得ることに成功した。その結果からは、なわばり雄の攻撃性が提示したモデルによって異なるという、本研究の予測通りの傾向がうかがえた。 3. 今後、本研究をさらに展開するために、ルリビタキの個体差に関する生理学的な予備調査を進めた。以上、本研究は研究実施計画に従い進行中であり、色彩信号研究に関する本研究の方向性を確認できた。この結果を基盤として、本実験を継続し十分なデータの収集を継続するとともに、次年度の研究を展開する予定である。
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