研究概要 |
進化ゲーム理論では、進化的に安定な戦略(ESS)が進化の最終到達点となる。ESSが複数存在するゲームにおいて、どのESSが実現するのかというESS選択の問題に対し、有限集団と空間構造の2つの異なるモデルを比較し、どちらが支配的かを明らかにするのが、本研究の目的である。初年度として、2プレイヤー2戦略対称ゲームを扱った。特に、戦略の複製様式として、単純な線形型(レプリケータ方程式)のみならず、同調伝達によって戦略が広まっていくモデルを提案し、空間構造を導入して解析した。解析においては、偏微分方程式の数学でよく知られたAllen-Cahn型反応拡散方程式における等速進行波解の存在や安定性についての定理が応用できることが明らかとなった。これらの結果は、京都大学数理解析研究所で行われたワークショップ「第5回生物数学の理論とその応用」で発表した。現在論文を執筆中である。また現在、囚人のジレンマゲームにおけるTit-For-Tat(を一般化した戦略)とAllDとの対戦について、有限集団効果に着目した研究を始めている。Tit-For-TatとAllDは多重安定系を成すことが知られており、本課題とも深い関係にある。そのほかに、生態的公共財ゲームにおいて協力戦略と裏切り戦略の共存ESSが不安定化することを示した研究(Hauert, Wakano, Doebeli 2008)、サンショウウオの成長戦略にみられる共存状態の維持メカニズムについての数理的研究(Wakano, Whiteman 2008)を、査読つき国際誌に発表した。
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