研究概要 |
進化ゲーム理論では、進化的に安定な戦略(ESS)が進化の最終到達点となる。ESSが複数存在するゲームにおいて、どのESSが実現するのかというESS選択の問題に対し、有限集団と空間構造の2つの異なるモデルを比較し、どちらが支配的かを明らかにするのが本研究の目的である。これまでに、戦略の複製様式として単純な線形型(レプリケータ方程式)ではなく同調伝達によって戦略が広まっていくモデルを提案し、空間構造を導入して解析した。解析においては、偏微分方程式の数学でよく知られたAllen-Cahn型反応拡散方程式における等速進行波解の存在や安定性についての定理が応用できることが明らかとなった(論文投稿中)。また、多人数型囚人のジレンマゲームにおいて、Tit-For-Tat(を一般化し、寛大さを併せ持つ戦略)とAllD(裏切り戦略)との対戦について、有限集団効果に着目した研究を行い、相手の裏切りを許す寛大さが、有限集団では進化的に実現可能であることを示した(論文は2010年に発表)。さらに、生態的公共財ゲームにおける協力戦略と裏切り戦略の進化ゲームダイナミクスを研究した。空間構造がないときには混合戦略がESSとなるが、空間構造があるときにはこれが不安定化し、非常に複雑なダイナミクスを示しながら結果として協力を促進することを示した研究(Wakano, Nowak, Hauert 2009)を米科学アカデミー紀要に発表した。
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