本研究では、真社会性という脊椎動物において稀な社会形態をもつ地下性齧歯目ハダカデバネズミを対象に、群れ生活の維持に重要な役割を果たす集団的意思決定(個体が協調して複数の選択肢からひとつの選択肢を選ぶ意思決定)を研究した。同種は、複数個体が協調した労働行動によって地下トンネル内に複数の部屋を形成し、それぞれの部屋をネストや巣材溜め場に使い分ける。本研究では、この決定過程における決定個体、労働コストとの関連、個体間コミュニケーションを実験的に検証した。その結果、集団的意思決定には、カースト制度による影響がみられ、とくに女王個体とワーカー個体および繁殖オス個体の間で行動パターン・頻度に差がみられた。この結果を検証するために、社会的・環境的条件を操作した実験においても、カーストの影響を支持する結果が得られた。また、異なるタイプの協力的な社会(協同繁殖、繁殖の偏りが小さい群れ)を形成する近年な他の哺乳類を対象とした研究を行い、真社会性を形成するハダカデバネズミにおける独自性を考察した。
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