当該年度(平成21年度)は、NPH3様タンパク質MAB4ファミリーによるPIN局在制御機構の一端を明らかにした。MAB4ファミリー遺伝子の欠損変異体において、PINタンパク質の詳細な局在解析を行い、細胞膜上のPINタンパク質の減少そして極性の脆弱化が確認された。また、PINタンパク質は細胞膜から内部移行し、一部は細胞膜にリサイクリングされ、残りは液胞へと輸送され分解される。変異体において、それらのPIN動態に関して異常があるか薬理学的手法を用いて調べた。その結果、PINの液胞への輪送および細胞膜へのリサイクリングには異常が見つからなかったが、細胞膜からのPINの内部移行に異常が確認された。変異によって野生型よりも内部移行が促進されていた。さらに、MAR4ファミリータンパク質の局在解析を詳細に行ったところ、細胞膜にPIN極性とほぼ同じ極性を持って局存化することが明らかとなった。これらのことから、MAB4ファミリータンパク質はPINタンパク質の細胞膜からの内部移行を阻害することが示唆された。このことから、MAB4ファミリー遺伝子がPINの極性制御機構においてこれまで予想もされてこなかった機能を持つことが明らかとなった。そして、本年度得られた結果をもとに、次のようなPIN極性形成モデルを提唱している。PINタンパク質は翻訳後いったん細胞膜全面に極性を持たずに局在する。その後、MAB4ファミリーが局在するという細胞膜上ではPINの内部移行が阻害され細胞膜に保持される。一方、MAB4ファミリータンパク質が局在しない細胞膜ではPINの内部移行により細胞膜に存在せず、PINタンパク質の局在MAB4ファミリータンパク質と同様の局在様式を示すようになる。今後はこのモデルめ検証を行っていくとともに、MAB4極性の確立機構の解明を目指す。
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