植物の枝は、葉が茎に接続する境界部(腋)に発生する腋生分裂組織が伸長したものである。したがって、枝づくりの仕組みを理解するためには、腋生分裂組織の制御の仕組みを解明することが不可欠である。また、茎の先端に位置する茎頂分裂組織は腋生分裂組織と似た制御を受け、茎頂分裂組織の理解は腋生分裂組織の理解につながる。シロイヌナズナのuni-1D変異体は、茎頂に存在する分裂組織の活性は著しく低下する一方で、異所的に非常に多数の枝を生み出す変異体であり、分裂組織の形成機構を調べる材料として非常に有用である。本研究は、uni-1D変異体を用いて、分裂組織の形成と維持の仕組みを、分子生物学ならびに遺伝学を有効に活用して解析することを目的とする。本年度は次の点を明らかにした。 1. uni-1D変異体の茎頂分裂組織の異常を回復する抑圧変異体の原因遺伝子として、細胞膜で受容体キナーゼとして働くERECTA(ER)を同定した。しかし、uni-1D変異体の異所的な腋性分裂組織の形成は、ERの機能欠損による影響は受けなかった。 2. ERとファミリーを構成するERL1(ERECTA-LIKE1)及びERL2の機能をERの機能とともに欠損させると、uni-1D変異体の異所的な腋性分裂組織の形成もまた抑圧された。 3. uni-1D変異体背景ではなく野生型背景において、ERファミリー遺伝子群が分裂組織に対して作用する仕組みに関して解析を進めた。その結果、野生型背景においても、ERファミリーの機能が分裂組織の制御に関わることが示唆された。 4. uni-1D変異体の分裂組織の異常を解消する抑圧変異体をさらに複数単離し解析を進めたところ、この抑圧変異体群の中には、uni-1D変異体背景ではなく野生型背景において、分裂組織の制御に特徴的な変化が見られるものがあった。
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