本年度は、(1)イネ青色光受容体cryptochromeの1つOsCRY2の機能解析、(2)OsGIタンパク質レベルの解析、(3)Ehd1遺伝子の発現に対するOsGIの作用機作について調査した。 (1) OsCRY2の解析:OsCRY2過剰発現体を作製し、Ehd1遺伝子の発現と出穂期への影響を解析した。しかしながら、コントロールと比較して、有為な差は観察することはできなかった。後代の薬剤耐性分離個体は、青色光の恒明条件下で濃緑色や倭性といった青色光に対する高感受性を示したことから、導入したOsCRY2遺伝子は機能しており、Ehd1の誘導に対して必須ではないと考えられた。 (2) OsGIタンパク質レベルの解析:明暗周期中でのOsGIタンパク質の蓄積を経時的に解析した結果、mRNAのピークとなる夕方にOsGIタンパク質の蓄積はピークを示し、転写レベルと同様にリズムを示すことを明らかにした。重要なことに、Ehd1の誘導が観察される朝のタイミングでのOsGIタンパク質量は、検出限界近くまで減少していた。このことはOsGIは概日時計構成因子として、間接的にEhd1の青色光応答性を制御していることを強く示唆している。 (3) OsGIを介したEhd1の発現制御機構:概日時計因子OsGIを介したEhd1の発現制御を明らかにするために、明暗周期中でエントレインしたフィトクロム欠損変異体se5を用いて、青色光の光中断実験を行った。その結果、Ehd1は朝に近いタイミングの青色光に対して最も強く誘導を受ける概日リズムを示し、OsGIはこのリズムの形成に必須な因子であることを明らかにした。 以上の結果から、青色光依存的かつOsGI依存的なEhd1の転写誘導は、OsGI(概日時計)を介して形成される青色光応答性と朝のタイミングで受容される青色光とが相互作用することにより引き起こされると考えられた。
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