研究概要 |
申請者はこれまで、フィブレート投与によるPPARαの活性化が、体内時計に作用し、活動リズム及び時計遺伝子の日周発現の位相を前進させることを発表してきた(Shirai H et al., BBRC, 2007)。飢餓の状態においては、フィブレート投与時と同様にPPARαの活性化が誘導されることが知られている。今年度申請者は、飢餓状態を模倣することで知られているケトンダイエットが、体内時計及び体温調節に及ぼす影響について検討を行った。その結果、2週間のケトンダイエット負荷によって、様々な末梢組織における時計遺伝子の発現位相が、4~8時間前進し、恒暗条件下での行動解析から、活動リズムを司る体内時計の位相も顕著に前進していることが判明した。このことは、PPARαを活性化させるような食餌によって、体内時計の位相が調節できる可能性を示している。 申請者らは、マウスにフィブレートを投与することにより日内休眠(暗期後半の体温低下)が誘導されることを発表してきた(Chikahisa S et al., Endocrinol, 2008)。この体温低下の誘導が、PPARαの活性化によって発現誘導されるFGF21を介している可能性について、FGF21のノックアウトマウスを用いて検討を行った。短期間の絶食による体温低下においては、野生型マウスとFGF21ノックアウトマウスとの間に差異は認められなかった。その一方で、ケトンダイエットを用いた慢性的飢餓による体温低下に対しては、FGF21ノックアウトマウスが、野生型マウスに比べて抵抗性を示すことが判明した。これらの知見は、PPARαの活性化を伴う体温低下に何らかの役割を担っているものの、その関与は間接的である可能性を示している。
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