アオキ属は日華植物区系固有のアオキ科の唯一の属で、中国西南部地域を中心に多様化しており約10数種が認識されてきた。しかし分類学的には非常に混乱しており、おそらく新種を含めそれ以上の種や雑種があると考えられる。また属内ではアオキのみに複数回起源の4倍体が知られているが、他にも倍数体種があり染色体倍数化が属の多様性に関与している可能性がある。本研究では、植物多様性における日華植物区系の重要性を理解するために、これまでの研究を踏まえて、「染色体倍数化の種分化への影響」・「日本列島周辺域でのアオキの種分化の進化的歴史」を明らかにし、「属内の分類学的再検討」を行うことを目的とした。中国周辺地域での植物調査により生植物を採取から抽出したDNA・RNAに基づく系統解析とゲノム比較による倍数性解析を行った。系統関係を踏まえた属内分類の再検討の他、染色体倍数化や雑種形成について研究を進めた結果、アオキ属は大きく2つの属に系統分化しており亜属とすること、A.chinensisなど種の認識に誤解があり分類が混乱していたこと、属内では複数の倍数体種がアオキを含めていくつかが異質倍数起源であることが明らかになった。
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