北関東地方の野生ワカメ集団の遺伝的構造についてミトコンドリアマーカーおよび核ゲノムコードのマイクロサテライトマーカーを用いて解析を行った。小名浜、十王、大洗、銚子、勝浦の5集団のそれぞれから30-50個体を採集し、解析にかけた。ミトコンドリアにおいても核マイクロサテライトマーカーにおいても、小名浜集団は、マイクロサテライトでFst 値が0.46-0.56と、他の4集団との間に顕著な分化をしめした。小名浜集団は、ミトコンドリアハプロタイプにおいては、他の4集団との間に共通するものはみられなかったが、マイクロサテライトの対立遺伝子においては、特に十王や大洗と共通するものが見られた。これらの結果は、ミトコンドリアマーカーの解析から知られていた遺伝的構造が核ゲノムにおいてもみられること、また卵配偶を行う本種における遺伝子流動が、メス配偶子や遊走子よりも、雄配偶子において生じていることを示唆している。
|