本年度行ったことは、主に以下の3点である。1) 異型交配の例を発表した。本研究課題では、Cyprichromis coloratusにオスに見られる集団内色彩二型を利用して遺伝子をマッピングを試みている。このオス色彩二型が維持されるには、異型交配が関係していることが予想される。そこで、ペアの観察が容易な近縁種Perissodus microlepisにおいて異型交配が行われていることを示した。野生集団において明確な異型交配が観察されたのは本研究が世界初である。2) 採集調査を行った。10月20日〜12月2日にザンビアのムプルングを訪れ、タンガニイカ湖でC. coloratオスの青尾型を37個体、黄尾型を32個体採集した。この数は遺伝子探索に十分であると考える。しかしもし足りなければ、来年度の調査でさらに採集する。3) 遺伝子の探索を開始した。先行研究によって、C.coloratusに近縁なシクリッド3種の連鎖地図が作成されている。本研究は、これらの連鎖地図と、その作成に使用された遺伝子マーカーを用いてオスの色彩型とメスの好み型をマッピングしようとするものである。本年度は、マイクロサテライトとSNP併せて20マーカーの遺伝子型を特定した。またこれとは別に、近縁種で色彩変異との関係が示唆されている遺伝子のエクソン領域をシーケンスした。これまでのところ、オスの色彩間に有意な違いの見られるマーカーは見つかっていない。しかし、連鎖3番と12番に載っている複数のマーカーにおいてP値が低い傾向にあった。今後の探索に期待が持てると考える。
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