研究課題
本研究は、タンガニイカ湖に生息シクリッドCyprichromis属のオスに見りれる集団内色彩二型が、どのように維持されるかを解明しようとするものである。この研究は、進化生物学における大きなトピックの一つ「性選択による種分化」の仕組みと密接に関係すると考えられ、本研究を行う意義は大きい。今年度(21年度)に行った内容は、主に以下の3点である。1)野生個体群から得られたC. coloratusの青尾型オスと黄尾型オスの間で、アリル頻度が異なるマイクロサテライトマーカーを探索した。これにより、候補となる一つのマーカーを見つけた。しかし、まだ精度が低いため、今後さらに多くのマーカーを調査する必要がある。2) ザンビア・ムプルングにおける現地調査でC. leptosomaの青尾型オスと黄尾型オスを採集した。この種においても、色彩型間でアリル頻度に差が見られるマーカーを探索する。3) C. leptosomaの飼育と繁殖を軌道に乗せることにほぼ成功した。本種の飼育繁殖は一般に難しいことから、当 初は「研究実施計画」に含めていなかった。しかし飼育実験を行うことにより、上述の野生集団の解析よりも確実にオス色彩およびメス好みの遺伝子を探索することが可能となる。このため、20年度末から熱帯魚愛好家の協力を得て飼育繁殖を試み、いまでは実験に供する目処が立つまでになった。現在、黄尾型しか出現しない飼育家系のメスと野生の青尾型オスの交配実験を進めており、F2(孫世代)を86個体得たところである。今後はさらにF2を増やし、遺伝子地図を作製して、オス色彩およびメス好みの関連解析を行う。このように今年度は、当初の計画にあった野生集団の解析の他に、実験室で交配実験を行う目処を立てることができた。これにより、本計画の目的である色彩二型の維持機構の解明を、多面的に調査検証することが期待される。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Hydrobiologia 644
ページ: 139-143
Journal of Experimental Zoology Part A 313(Published online.)
Molecular Ecology 18
ページ: 3110-3119