研究課題
タンガニイカ湖に生息する遊泳性シクリッドCyprichromisでは、オスの色彩に明瞭な集団内二型が見られる。しかし、その適応的意議(二型があることの利点)や、二型の維持機構(どうして片方の型だけにならないのか?どうして三型以上にならないのか?)は全く分かっていない。本研究の目的は、この集団内色彩二型の維持機構の解明である。二型の維持機構を解明する第一段階として、オス色彩の遺伝的基盤の解明を考えている。これまで、野生集団を用いた関連分析において、色彩遺伝子と連鎖する有力な候補遺伝子マーカーが見つかっている。しかしシグナルが弱く、色彩の遺伝的基盤を結論づけるには至っていない。そこで、より精度の高い連鎖解析を行うことにした。この解析では、遺伝的分離を示す世代の集団を養成しなければならない。このため本年度は交配家系を確立し、解析に十分な数のF2個体を得た(オスが全て黄尾型になる家系のメスと青尾型オスを掛け合わせた家系)。F1(子供世代)のオスは全て青尾型で、F2(孫世代)のオスでは青尾型と黄尾型の両方が出現している。中間型が出現していないため、色彩がメンデル遺伝と関係していると考えられる。このF2は、23年度から採択された基盤研究(B)において遺伝的に調査し、遺伝領域の探索を行う。また本年度は、アフリカの現地における採集調査も行った。この調査では、連鎖解析の結果を野生個体で検証するためのサンプルを採集した。この魚は、オスの色彩が派手で二型があるが、メスは地味で二型はない。このため、オスの色彩二型の維持機構にメスによる配偶者選択が関係していると考えられる。本研究は、アフリカ古代湖シクリッドの性選択による種分化の解明にも貢献するだろう。
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International Journal of Evolutionary Biology
巻: 2011 ページ: Article ID620754(14)