今年度の調査では、5月から6月までの一ヶ月間、中華人民共和国で調査を行った。前半の二週間は広西チワン族自治区で野外調査を行った。特にこれまでに新種の標本が得られていた北部や北東部を中心に、追加標本の採集に取り組んだ。最初に訪れた資源では、フトイモリ属Pachytritonの同所的に生息する2種のサンプルを採集することができた。また、次に訪れた賀州では、チョンシャンコブイモリParamesotr iton fuzhongensisを偶然入手することができた。本種はクワンシーコブイモリP.guangxiensisなどの同物異名とする考えもあり、本種の分類学的な有効性の調査は今後の課題となった。次に広西チワン族自治区から、四川省の成都に移動して、中国科学院成都生物研究所などの所蔵標本の調査を行った。そこでは、フトイモリ属やコブイモリ属の他、イボイモリ属、ミナミイボイモリ属、タカネサンショウオウ属、リュウサンショウウオ属の各種の基準標本の計測や写真撮影を行うことができた。また、四川滞在中には、峨眉山や合江などで短期の野外調査も行うことができた。帰国後には、昨年からの成果をまとめて、Pingia属のキメアラフトイモリP.granulosaがムハンフトリモリPachytriton labiatusの同物異名であることや、ユナンサンショウウオHynobius yunanicusがフトサンショウウオPachy hynobius shangchengensisの同物異名であることを論文として公表した。
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